産業用電子機器や組み込みシステムの開発をどの会社に依頼すべきか考えるときは、発注前に次の5つの判断軸を確認しておく必要があります。
- 対応範囲(一体開発か、分業か)
- 仕様策定と開発の進め方(ODM/OEM)
- 技術領域の適合(装置カテゴリの実績)
- 数量・ロット(試作台数・量産ロット)
- 量産後の対応・保守(修理・ファームウェア更新・改修・部品EOL)
ここが曖昧なまま進むと、工程の手戻り、試作のやり直し、量産条件の食い違いが起こりやすくなります。
本記事では、産業用電子機器・組み込みシステムの開発会社を選ぶ際の判断軸と確認ポイントをご紹介します。
産業用コントローラ、画像検査、装置制御などの開発を検討している企画・設計・調達担当の方に向けて、候補会社に確認したいことと、当社(杉岡システム)に相談しやすい案件の目安を示します。
この記事で分かること
- 産業用電子機器・組み込み開発を外注するときの確認ポイント
- 一体開発と分業、ODMとOEMの違いを選定時にどう見るか
- 数量・ロット、量産後の対応で事前に確認しておくこと
- 候補会社への相談時に確認したい6つの項目
- 杉岡システムに相談しやすい案件・向きにくい案件の目安
なぜ「会社選び」が難しいのか
組み込み機器の外注は、Web制作や業務システム・単機能ソフトの発注とは前提が異なります。一般的なソフトウェア外注の進め方をそのまま当てはめると、工程境界、数量・ロット、納品後の扱いが後から問題になりやすくなります。
| 観点 | 一般的なソフトウェア外注 | 産業用電子機器・組み込みの外注 |
|---|---|---|
| 手戻りのコスト | リリース後の修正が比較的容易 | 試作・基板改版・評価のやり直しが時間と費用に直結しやすい |
| 境界 | アプリ/サーバなど論理境界が主 | 回路・基板開発・筐体・ソフト・検査の工程境界が最初から論点 |
| 数量 | ライセンスや同時利用数が主 | 試作台数・量産ロットが体制と見積もりの前提になる |
| 納品後 | 機能追加・運用改善が中心になりやすい | 修理・ファームウェア更新・部品EOLが最初から議題になる |
特に、組み込み機器では次の点を最初に見ておく必要があります。
- ハードウェア・ソフトウェア・アプリケーションが密接に絡むため、どこまでを一社に任せるか
- 仕様が固まる前から相談したい案件か、設計仕様がほぼ決まっている案件か
「技術力が高そうか」だけでは判断できません。以下では、発注前に揃えておきたい判断軸を5つに分けて整理します。
判断軸1:対応範囲(一体開発か、分業か)
最初に確認したいのは、「何を・どこまで任せるか」です。
よくある切り分け方は次のとおりです。
| 進め方 | 特徴 | 向く場面の例 |
|---|---|---|
| 一体開発 | 回路設計・基板開発・筐体設計・ソフトなどを一体で開発する | 仕様の境界が流動的、ハードもソフトも一社に任せたい |
| 分業 | ハードとソフト、基板と筐体などを複数社に分ける | 社内で仕様や工程管理を主導できる、工程ごとに依頼先が決まっている |
分業は専門性を活かせる一方、開発スタイルの不統一、不具合時の原因切り分けの遅れ、仕様変更時の調整コストが課題になりやすいです。
なお、一体開発であっても、すべての工程を一社内で内製しているとは限りません。重要なのは「内製か外注か」ではなく、自社が任せたい範囲に対応できる開発体制かです。
当社では、ハードウェアとソフトウェアを含む一体開発(ODM/OEM)を基本としています。基板開発は仕様策定から量産対応までを担い、アートワークは提携会社、筐体加工は提携工場と進めます。ハードウェアのみ・ソフトウェアのみ・設計のみといった単独範囲は、案件内容によって対応可否が異なります。
分業と一体開発の論点を詳しく見る場合は、次の記事を参照してください。
判断軸2:仕様策定と開発の進め方(ODM/OEM)
次に、仕様策定の主体と、依頼先がどこまで開発に関わるかを確認します。
| 方式 | 仕様策定の主体 | 進め方の目安 |
|---|---|---|
| ODM | 主に受託側 | 委託側(発注側)の構想や要望をもとに、受託側が仕様を整理し、設計・開発・製造を進める |
| OEM | 主に委託側 | 委託側(発注側)が提示した企画・設計仕様をもとに、受託側が設計支援・開発・製造を進める |
組み込み領域では、実務上は中間的な進め方(ハードはOEM、ソフトはODMなど)になることもあります。用語の定義だけで判断せず、案件ごとに、発注側と依頼先のどちらが仕様を決め、依頼先がどこまで担うのかを確認しておくことが重要です。
当社では、構想段階から仕様を整理するODMと、設計仕様が固まっている案件向けのOEMの両方に対応しています。用語の整理と使い分けは、次の記事にまとめています。
判断軸3:技術領域の適合
「組み込み開発に対応できる」というだけでは、自社案件に適した発注先かどうかまでは判断できません。自社案件で求める機能や条件を整理し、候補会社の技術領域や開発実績と照らし合わせる必要があります。
自社側では、使用するデバイスやOSまで具体的に決めておく必要はありません。用途や必要な機能についておおまかな想定があれば、構成や技術方式は候補会社との相談の中で固めていけます。
例えば、次のような点を整理しておきます。
- 装置の用途と、実現したい機能
- 画像処理・装置制御・通信I/Fのうち、どれが装置の中核となるか
- 必要な応答時間、処理量、接続する機器やI/F
- 装置を何年間使用する想定か、長期供給や部品変更への対応が必要か
- 試作後の動作確認や量産時の検査について、どの範囲まで依頼したいか
これらの条件をもとに、プログラマブルロジック(FPGA / SoC)が要るか、Arm系プロセッサや産業用PCで足りるか、組み込みLinux、RTOS、ベアメタルのどれが適しているかを候補会社と検討します。
候補会社を確認する際は、対応可能なデバイス名の列挙だけでなく、同種の装置カテゴリで、仕様整理から試作・動作確認まで進めた経験があるかを見ることが重要です。
公開されている実績や説明から、対象が産業用コントローラなのか、画像検査なのか、装置制御なのかを確認します。具体的にどの工程まで担当したのかは非公開の場合も多いため、必要に応じて問い合わせで確認します。
デバイス名は、要求を実現するための手段です。
用途、応答時間、処理量、I/Fの制約、使用期間などの条件と、候補会社の実績や対応範囲を照らし合わせることで、自社案件との適合を判断しやすくなります。
FPGA / Zynq SoCの位置づけは、次の記事で整理しています。
当社では、産業用コントローラ、画像検査・装置制御、映像遅延・映像記録などの開発において、AMD/Xilinx
FPGA・Zynq SoC・Arm系プロセッサ・組み込みLinuxを用いた実績があります。
対応範囲や開発の進め方は
サービス紹介 を、具体的な実績は
開発実績 を参照してください。
判断軸4:数量・ロット
試作台数や量産ロットは、開発体制、部品調達、見積もりの前提に関わります。まず社内で次の点の見込みを立て、候補会社とすり合わせます。
- 試作の回数と台数
- 量産の想定台数(初回ロットと年間)
- 数台のみで完結するのか、継続的な生産や追加発注を見込むのか
- 既存機の置き換え・改修なのか、新規開発なのか
当社の受託開発(ODM/OEM)は、小ロットから数百台規模の中ロットまでを想定しています。試作は量産を前提とした工程として承るため、量産を予定せず数台のみで完結する案件は、原則としてお受けしていません。
対応できるかどうかは案件内容によって異なります。ご検討中の数量や仕様、予算などをお聞かせいただければ、対応可否をご案内します。
判断軸5:量産後の対応・保守
産業用機器は、納品後も長期間使われることがあります。発注前に量産後の対応範囲を確認しておくと、運用開始後の対応の遅れを防ぎやすくなります。
次のような点を確認します。
- 不具合発生時の原因切り分けや修理を、依頼先がどの範囲まで担うか
- ファームウェア更新に対応できるか、発注側と受託側でどのように分担するか
- 量産後の仕様変更や改修を継続して相談できるか
- 部品EOL発生時に、代替部品の選定・評価をどちらが進めるか
「保守」といっても、対応範囲は会社や契約内容によって異なります。
なかでも部品EOLは、会社ごとに対応の幅が大きい論点です。
受託側が部品の供給状況を確認して代替部品の選定・評価まで進める場合もあれば、受託側は指定された部品での製造のみを請け負い、部品の選定や変更判断は発注側が行う場合もあります。
また、量産後の保守や将来の仕様変更を考える際は、成果物の扱いも確認しておく必要があります。
ソースコード、回路図、基板関連データ、仕様書、検査資料などのうち、どこまでが納品対象になるかは、会社や契約内容によって変わります。
当社では、量産後の製品修理やファームウェア更新、仕様変更に伴う改修に加え、部品EOLが発生した際の代替部品の選定・評価にも対応しています。
保守・アフターサポートの範囲と成果物の納品範囲は、案件内容に応じて打ち合わせで定めます。
発注前チェックリスト
社内で次の項目を整理しておくと、問い合わせがスムーズです。すべて埋まっている必要はなく、未定の項目は未定として伝えれば十分です。
- 目的と用途 — 何を・どの環境で・誰が使う装置か
- 仕様の固まり具合 — 構想段階か、要求仕様や設計仕様があるか
- 対応範囲 — 一体開発か分業か、どこまでを一社に任せたいか
- 技術の前提 — 必須I/F、リアルタイム要件、想定しているデバイスやOSなど
- 数量 — 試作台数、量産見込み
- スケジュール・予算 — 試作・量産の希望時期、納期の制約、想定予算
- 提供できる資料 — 既存機の仕様、ブロック図、現物、参考品など
- 成果物 — ソースコード、回路図、仕様書、検査資料など、納品を希望するもの
- 量産後の対応 — 修理・ファームウェア更新・改修・部品EOL対応の要否
問い合わせ時は、固まっている点と未決の点を分けて伝えると、候補会社側も進め方を提案しやすくなります。
候補会社への相談時に確認したいこと
発注前チェックリストが自社側の情報を整理するものなら、ここでは候補会社との相談時に確認したい項目を整理します。
初回の相談ですべての条件を確定する必要はありません。まずは、自社案件が相談対象に入るか、どの段階からどの範囲まで相談できるかを確認します。
次の6項目を確認しておくと、相談範囲や前提の食い違いを早めに把握しやすくなります。
-
この案件では、どの工程まで相談・依頼できるか
見る点:ハードウェア・ソフトウェア・試作・量産など、自社が希望する範囲に対応しているか、部品選定を含めて設計段階から相談できるか -
仕様が固まっていない段階でも相談できるか
見る点:構想や用途をもとに仕様整理から進められるか、相談時にどの程度の仕様が必要か -
自社案件に近い装置カテゴリの開発経験があるか
見る点:同種または類似する装置で、どのような工程を担当した実績があるか -
検討中の数量・希望納期・予算で相談できるか
見る点:試作台数や量産見込みを含め、現時点の条件が候補会社の対応範囲に合うか -
量産後の修理・ファームウェア更新・改修・部品EOLについて相談できるか
見る点:納品後も、保守や仕様変更について継続して相談できるか -
ソースコード・回路図・仕様書・検査資料などの成果物は、どのような扱いになるか
見る点:成果物の納品範囲について、案件に応じて相談できるか
いずれも、初回の相談で確答を求めるものではありません。仕様や開発範囲が未確定の場合は、相談を進めながら必要な条件を整理していきます。
杉岡システムが向いている相談・向きにくい相談
ここまでは発注先を選ぶための判断軸と確認観点です。以下は当社に相談しやすい案件・向きにくい案件の目安です。
向いている相談の例
- ハードウェアとソフトウェアを含む一体開発(ODM/OEM)での産業用電子機器・組み込み機器
- AMD/Xilinx FPGA・Zynq SoC・Arm系プロセッサ・組み込みLinuxを用いた構成
- 産業用コントローラ、モーションコントローラ、汎用コントローラなどの制御機器
- 高速画像検査・リアルタイム制御、装置制御ロジックを含むFA・製造ライン向けシステム
- 映像遅延装置、トリガ記録などの映像記録装置、入退室管理などの設備制御
- 仕様整理から試作、小ロット〜数百台規模の中ロット量産まで(量産を予定しない数台のみの製作は原則対象外)
- 構想段階からの相談、量産後の修理・ファームウェア更新・改修・部品EOL対応を見据えた開発
自社製品としては映像遅延装置「カコロク」シリーズも展開していますが、受託開発の選定とは別軸です。製品単体の仕様・デモは 製品ページ を参照してください。
原則として向きにくい/対応対象外になりやすい例
- 量産を予定せず、数台のみの製作で完結する案件
- ハードウェアのみ・ソフトウェアのみ・設計のみなど単独範囲のご依頼(案件内容により対応可否が異なる)
- 製品カスタマイズで1台のみのご依頼
「自社に合うか分からない」段階でも、用途とご検討中の数量・大まかな予算が分かれば、対応可否の目安をお伝えできます。
次のステップ
- 「発注前チェックリスト」のうち、分かる範囲をメモする
- 候補会社の公開情報で、自社の想定に近い装置カテゴリの実績があるか確認する
- 仕様が固まっていなくても、候補会社に問い合わせて相談する
- 打ち合わせでは、「候補会社への相談時に確認したいこと」6項目をもとに、対応範囲や条件を確認する
当社が候補に入る場合は、上記の「向いている相談・向きにくい相談」で目安を確認できます。仕様が固まっていない段階でのご相談も お問い合わせフォーム より承っています。
まとめ
産業用電子機器・組み込みの外注では、次の5軸を先に揃えると会社選びがしやすくなります。
- 対応範囲(一体開発か分業か、工程の分担)
- 仕様策定と開発の進め方(ODM/OEM、仕様策定の主体)
- 技術領域の適合(装置カテゴリの実績を含む)
- 数量・ロット
- 量産後の対応・保守
候補会社の一覧を比較する前に、自社の案件ではどの判断軸を重視すべきかを明確にすることが先です。
そのうえで「候補会社への相談時に確認したいこと」6項目をもとに対応範囲や条件を確認し、自社案件に近い装置カテゴリの開発実績があるかを見ていきます。
当社は一体開発(ODM/OEM)による産業用電子機器の受託開発を中心に、仕様整理から試作・量産、量産後の修理・ファームウェア更新・改修・部品EOL対応まで手がけています。
用途や仕様、ご検討中の数量・希望納期・予算などをお聞かせいただければ、対応可否をご案内します。