組み込み機器を外部に開発委託する際、よく出てくるのが ODM と OEM という用語です。
本記事では、両者の違いと、組み込み機器特有のライフサイクルを踏まえた選び方を解説します。
ODM と OEM の違い
ODM(Original Design Manufacturing)と OEM(Original Equipment Manufacturing)は、設計の主体が異なります。
-
ODM
受託側が仕様策定から設計・製造までを一貫して対応する方式。委託側は企画や構想を提示する立場です。
-
OEM
委託側が設計仕様を用意し、受託側がその仕様に基づいて製造を担当する方式。設計の主体・責任は委託側にあります。
組み込み機器の領域では、受託側が設計仕様に基づき、技術的検証や実装・統合といった工程を担うケースもあります。
工程ごとの担当を整理すると次のとおりです。
なお、試作品の評価や量産品の受入判断は委託側が行います。
| 項目 | ODM | OEM |
|---|---|---|
| 企画・構想 | 委託側 | 委託側 |
| 仕様策定 | 受託側 | 委託側 |
| 設計 | 受託側 | 委託側 |
| 試作 | 受託側 | 委託側 / 受託側 |
| 量産 | 受託側 | 受託側 |
| ブランド・販売 | 委託側 | 委託側 |
整理すると、ODM は「仕様策定から製造までを受託する方式」、OEM は「委託側が用意した設計仕様に基づいて製造を担当する方式」と言えます。
組み込み機器ならではの論点
組み込み機器は、消費財や PC 周辺機器と比べてライフサイクルが長く、設計から量産・保守までの期間が数年に及ぶことがあります。また、ハードウェア・ソフトウェア・アプリケーションが密接に絡むため、「設計」と「製造」を単純に切り分けにくい性質があります。
このため組み込み機器の受託開発では、次のようなポイントが論点になります。
- どこからが受託側のスコープか(仕様策定/回路設計/ロジック設計/基板開発/筐体設計/ソフトウェア開発)
- 量産期間中の不具合対応・ファームウェア更新の責任分担
- 部品 EOL(生産終了)に伴う再設計の進め方
ODM か OEM かを選ぶ前に、これらの境界をどう引くかを委託側・受託側で揃えておくことが、後の手戻りを防ぐ近道になります。
当社の ODM での進め方
当社の ODM サービスでは、お客様のラフな構想段階からご相談いただけます。
仕様策定 → 回路設計・ロジック設計(HDL)・基板開発・筐体設計・ソフトウェア開発 → 最終組立・検査までを一貫して対応します。
仕様が整っていない段階でも、用途や運用環境をもとにヒアリングし、技術的に実現可能な構成を具体化していきます。
量産後の不具合対応・仕様変更・部品 EOL に伴う再設計についても、設計担当者が継続して関与し、長期運用まで見据えて対応します。
当社の OEM での進め方
すでに設計仕様が固まっている案件では、OEM として開発・製造を進めます。
技術的検証や改善提案を行い、品質・コスト・量産性の観点から設計仕様の見直しが必要な場合は、お客様と相談のうえ対応します。
量産後の不具合対応や部品変更時の評価についても、設計仕様との整合性を踏まえながら対応します。
ODM と OEM の使い分け
実務上は、案件によって ODM と OEM の中間的な進め方になることもあります。たとえば、ハードウェアは委託側の設計仕様に沿って OEM で進めつつ、ソフトウェアは当社が ODM として設計から担当する、といった組み合わせです。
判断の目安としては、次のように整理できます。
- 構想段階や仕様策定から相談したい → ODM
- 設計仕様は固まっており、開発・量産を任せたい → OEM
- 領域ごとに役割を分けたい → 案件単位で都度相談
委託範囲が決まっていない場合でも、要件のヒアリングを通じて適した進め方を提案できます。
対応規模と開発体制
当社はハードウェア・ソフトウェアを一体で開発する体制を持ち、必要に応じてアプリケーション開発も行っています。
小ロットから数百台規模の中ロット生産まで対応可能です。
構想段階でも問題ありません。要件整理や仕様検討を含め、まずはお気軽にお問い合わせください。
開発実績の例
組み込み機器の ODM・OEM 開発の実績一例を以下に紹介します。
- 製造ライン向け 画像検査・画像処理ユニット — x86-64 PC + 産業用カメラ + 自社開発ソフトウェアによる画像処理システム
- FA 向け モーションコントローラ — Arm ベース SBC を用いた Ethernet / 光ファイバー接続のサーボ制御装置
- セキュリティ向け 入退室管理コントローラ — Zynq SoC ベースの組み込みコントローラ
- 産業機器向け 汎用コントローラ — AMD/Xilinx SoC を用いた SiC パワーデバイス制御用組み込みシステム(イーサネット・USB・シリアル・ディスプレイ等の多様な I/F に対応)
その他の実績は 開発実績ページ で紹介しています。
対応技術(技術スタック)
ODM・OEM のいずれの方式でも、下記の技術スタックを軸に開発を進めます。
- OS・実行環境 — 組み込みLinux、Ubuntu、Windows 11、Android、RTOS、ベアメタル
- プロセッサ・プラットフォーム — Zynq-7000、Zynq UltraScale+ MPSoC、AMD/Xilinx FPGA、NVIDIA Jetson、Arm Cortex-A / Cortex-M、x86-64
- プログラミング言語・HDL — C / C++、Python、Rust、JavaScript / TypeScript、VHDL / Verilog
- 通信インターフェース — UART / SPI / I2C、EtherCAT、Ethernet(TCP/IP)、USB、HD-SDI / 3G-SDI、HDMI / DisplayPort
- 開発ツール — Vivado / Vitis、PetaLinux / Yocto、OrCAD、Autodesk Fusion、Git / Docker
最新の対応技術は サービス紹介ページ の技術スタックセクションをご参照ください。